Introduction to Synthesizers

2. シンセサイザーの種類

初心者の皆さんの中には「シンセサイザーって何?」という人もいるかも知れません。そこでシンセサイザーとはどういうものなのか、はじめに簡単な解説をしておきたいと思います。まず本章ではシンセサイザーの「作り」とその変遷について解説します。

シンセサイザーは20世紀のアナログ電子回路の発達とともに誕生し、その後デジタル回路、そしてソフトウエアとその方式が変化してきました。発明された当初(1950年代)のシンセサイザーは巨大な装置で、研究室の中で専門家が何人もかけて操作する代物でしたが、今ではコンピューター上のソフトとして誰もが簡単にインターネットで入手でき、マウスで簡単に操作できるようになりました。ここでは大まかな年代順に3種類の方式に分けて解説します。

なおシンセサイザーの歴史についてもっと興味のある人は、例えば 120 Years of Electronic Music などがよい解説です。

2.1. アナログシンセサイザー

抵抗、コンデンサーやトランジスターなどのアナログ回路で音声合成を行う方式です。1970年前半にMinimoog(「ミニムーグ」という発音が一般的ですが正しくは「ミニモーグ」です)やARP Odyssey(日本では「アープ・オデッセイ」と言っていますが、「オディスィー」と発音しないと英語圏の人に通じません)など一般ミュージシャン向けの製品が作られるようになり、プロを中心に広まりました。1980年代のデジタルシンセサイザーの台頭により一時は消滅しかけましたこともありましたが、今でもその太く暖かみのある音色がプロを中心に好まれており、ミュージシャンの個人スタジオに30年位前のアナログシンセサイザーがずらりと並んでいたりします。

上記の2機種や1970年代後半に作られたProphet-5などが代表的な名機でこれらは現在でも中古市場で高値で取り引きされています。また1990年代に入ってテクノ系ミュージシャンにRoland TB-303が大流行したこともあります。現在でも Doepher など少数ですが新製品を作っているメーカーがあります。

2.2. デジタルシンセサイザー

IC,LSIなどのデジタル回路で音声合成を行う方式です。1983年のYAMAHA DX7のデビューをきっかけとして、一般にアナログ方式よりずっと安価で高機能なことから1980ー90年代を通じて広く一般に普及しました。シンセサイザーがプロ以外の人でも気軽に買えるようになったのもデジタルシンセサイザーが出始めた1980年代のことです。

アナログシンセサイザーの多く(Moog,ARPなど)はアメリカ製でしたが、デジタルシンセサイザーの代表機種はその多くが日本製です。まずYAMAHA DX7が大流行し、次にRoland D50、そして1980年代末にはKORG M1がベストセラーとなりましたがこれらはすべて日本のメーカーです。

2.3. ソフトウエアシンセサイザー

コンピューター上のソフトウエアとして計算により音声を合成する方式です。コンピューター以外の専用ハードウエアその他の外付け機器が必要なく安価で手軽なのが特色です。1990代後半に入りCPUの性能が向上した頃から実用的なものが作られるようになり、今ではCPUが年々高速化する一方、価格の安さや簡単さも相まって一気に広まりつつあります。

おもしろいことにソフトウエアシンセサイザーの現在の「本場」はアメリカでも日本でもなく、ドイツとスウェーデンを中心とするヨーロッパ諸国です。ソフトウエアシンセサイザーが一般的になったのはドイツのソフトメーカー steinberg がCubase VSTを発表した頃からです。元々MIDIシーケンスソフトだったCubaseに(当時としては大胆に)オーディオサンプル処理機能を統合したことにより高価な外部機器なしでコンピューターだけによる音楽制作が可能になりました。ほぼ同時期にもう一方の雄である(これもドイツの) emagic がLogic Audioを発表しており、この2つのメーカーが現在の音楽分野のソフトウエアを事実上リードしていると言っていいでしょう。これらの発表当初(1997-8年頃まで)はまだCPU速度が十分とは言えない状態でしたが、現在ではその問題もほぼ解決しコンピューターさえあれば誰でも自由にソフトウエアだけで音楽制作ができるようになっています。